「おとなの掟/Doughnuts Hole(作詞作曲:椎名林檎)」コード進行分析

2017年の1月から放送されていたTBSのTVドラマ「カルテット」の第1話で、エンディングで主題歌「おとなの掟」が流れてきたときに最初のAメロでグッと心を掴まれました。映像との合わせ技のせいかもしれないけど、聴きながらドキドキして、終わってもしばらくかなりの余韻が残りました。

作詞作曲は椎名林檎さん。この曲、いろんな点で良いなと思うのだけど、コードワークの観点を含めて特徴的な部分を取り上げ、紹介してみます。ちなみにDoughnuts Holeはドラマ内の演奏ユニットです。

■Aメロのコード進行

この曲のAメロのコード進行に着目してみます。曲の冒頭、歌詞で「真っ黒な中にー」から「ー飲み込み匿います」のところまで。わかりやすく4カポにすると、以下のような進行です。

Key: Eメジャーキー(C#マイナーキー)
出現箇所: 冒頭から(歌詞:真っ黒な中に〜)
カポタスト: 4フレット

コード進行:
|Dm6|CM7|Bm7♭5|Am7|G#dim|Am7/G|F#m7♭5|FM7 E7|
※あくまで田端調べ

この進行のベース音の度数だけ抜き取ると(メジャーキー扱いで)、
2→1→7→6→6♭→5→5♭→4→3

半音全音が混ざっていますが、ベースが2度から3度まで一直線に下っていく進行です。なかなか珍しいパターンだと思います。

 

ベースが一直線に下りていく進行自体はよく現れるではあります。例えば以下のようなカノン進行の変化系。

Key: Cメジャーキー
C→G/B→Am→Am7/G→F→C/E→Dm→G

ベース音を度数表記すると以下のようなります。
1→7→6→5→4→3→2→5

しかし「おとなの掟」のAメロの進行は、ベース下りの始点が2度(マイナーキー扱いなら4度)になっています。これが特徴的で、JPOPとかだとほぼ前例がない形だと思います。

※わかりやすくするためメジャーキー扱いで記述しておりますが、この曲は普通はマイナーキー(C#m)で扱われます。

■サビのコード進行

次はサビのコード進行。歌詞で「好きとか嫌いとかー」から「台詞でしょう」のところまで。こちらも変わらずキーはE(C#m)なので、わかりやすく4カポにすると、以下のような進行です。

 

Key: Eメジャーキー(C#マイナーキー)
出現箇所: 冒頭から(歌詞:好きとか嫌いとか〜)
カポタスト: 4フレット

コード進行:
|Am7 Bm7♭5|CM7 C#dim|Dm7 D#dim|E7|

※あくまで田端調べ

コード進行のベース音のだけ抜き取ると(メジャーキー扱いで)、
6→7→1→1#→2→2#→3

こちらも半音全音が混ざって、ベース音が6度から3度まで一直線に上がっていきます。Aメロほど仰天する進行ではないですが、こちらも前例が多い形ではありません。Aメロとサビではベース音の移動方向が逆方向になっていて、譜面を見るだけで美しいと思えそう。

■おまけ(コードワーク意外の部分)

本曲の歌詞に、「好きと嫌い」「白と黒」「嘘と本当」「正解と不正解」「幸福と不幸」と対比関係にある言葉が散りばめられており本曲の世界観になっていますが、Aメロとサビのベース音の移動方向が逆方向になっているのは、この曲に盛り込まれたギミックの一つと言えるかもしれません。

この曲のアレンジは弦楽器4人のドラマの設定をアレンジにそのまま反映させていて、コーラスも部分的に男女4人の構成になっています。

歌詞の世界観も良くて、Cメロ(正しくはBメロになるのかな)後半の〝言葉のー〟からの韻の踏みながら間奏に向けて畳み掛けていく感じとか良いですね。ボーカルは特に松さんの歌が細かいニュアンスまで良くとれている印象を受けました。

ババっと書いたけど、ドラマタイアップ曲としても、楽曲単体としても良い作品だと思いました。

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