今回は「裏コード」と呼ばれるコードについて解説していきたいと思います。
■裏コードの正体
裏コードの正体は「サブスティチュートドミナントコード」というコードで、代理コードと言われるコードの内の一つになります。
“サブスティチュート”は、“代理”の意味を指すため「代理ドミナント」と呼んでも良いかもしれません。
ドミナントコードについては別の記事でも紹介していますが、この裏コードは、代理ドミナントというその名の通り、ドミナントコードにとって代わるコードになります。
例を一つ挙げてみます。
例1-1:
Dm7→G7→C
上記はCメジャーキーにおける一般的なツーファイブワンと呼ばれる進行です。ここでのG7がドミナントと呼ばれるコードで、トニック(ここでのC)への進行を強く促す、ドミナントモーションを作ります。
例1-2:
Dm7→D♭7→C
上記は裏コードを使った例です。例1-1のG7にとって代わり、D♭7が使用されていますが、このD♭7が裏コード、すなわちサブスティチュートドミナントになります。
裏コードの特徴
裏コードは半音下に解決する
例1-2で、G7の代理として置かれたD♭7は、次にトニックであるCに進行します。D♭7からCへは、半音下への動きになります。
裏コードは、半音下に解決するドミナントセブンスコード、と覚えておきましょう。
「裏」の意味は?
元々のドミナントコードと裏コードを比較してみると、
G7とD♭7それぞれのルート音であるGとD♭はオクターブの中で真反対に位置しているという特徴があります。これが「裏」コードと呼ばれる理由になっているのかもしれません。
ドミナントに代理される理由
改めて例1-1の進行を見てみましょう。
例1-1:
Dm7→G7→C
G7はCへのドミナントモーションをつくりますが、G7の構成音に着目してみます。
G7の構成音である「シ」と「ファ」はトライトーンと呼ばれる増4度の関係にあり、不安定な響きを作ります。
また、この「シ」と「ファ」はそれぞれCコードの「ド」と「ミ」に半音隣から進み、これが強い解決感と得られる理由の一つになっています。
この「シ」と「ファ」を持つもう一つのドミナントセブンスコードがD♭7であり、G7と同様のトライトーンが解決されます。これがドミナントコードに代理される理由となっています。
■裏コードの使用例
実使用例として、メロディをつけたコード進行における裏コードの有無を比較してみましよう。
例2-1:
|F#m7-5|FM7|Em7|A7|Dm7|G7|C…
例2-2:
|F#m7-5|FM7|Em7|E♭7|Dm7|D♭7|C…
どちらもCメジャーキーにおけるコード進行です。
例2-1におけるA7はDm7に解決するセカンダリードミナント、G7はCに解決するドミナントになっていますが、それら2つを裏コードに置き換えたものが例2-2になります。
すなわち、例2-2のE♭7はDm7に解決する裏コード、D♭7はCに解決する裏コードですね。
コード進行全体を通して、ルート音が半音ずつ下がる自然な流れの進行になっています。