パッシングディミニッシュとは? ー特徴と使用例ー

この記事では「パッシングディミニッシュ」というコードワークパターンについて記述します。使用頻度の高いコード進行パターンなので、ぜひチェックしてみてください。

■パッシングディミニッシュとは?

パッシングディミニッシュ(Passing Diminished)とは日本語だと「経過音的なディミニッシュコード」というような意味合いです。一般的には「2つのダイアトニックコードのあいだを繋ぐディミニッシュコード」というニュアンスで使われています。

以下、パッシングディミニッシュの主な使用パターンと、ディミニッシュコードが経過音として用いられる理由を記述します。

■パッシングディミニッシュの主なパターン

パッシングディミニッシュの基本は、次に半音上に進行するパターンになります。代表的なパターンを3つ、使用例とともに紹介します。

使用例①:Ⅴ→#Ⅴdim→Ⅵm

【YouTube】鱗/秦基博

使用箇所はサビです。以下のような進行。

Key: F#メジャーキー
出現箇所: 1:30〜(歌詞:君に今〜)

コード進行(簡易版):
|F#|B|C# Ddim|D#m|…

カポタスト4フレットで演奏する場合は、

コード進行(簡易版):
|D|G|A A#dim|Bm|…

度数表記だと、

|Ⅰ|Ⅳ|Ⅴ #Ⅴdim|Ⅵm|…

となり、赤文字部分がパッシングディミニッシュを含む進行になります。

ここでⅤをV7とすると、V7→#Ⅴdim→Ⅵmとなりますが、V7→#Ⅴdimのコードチェンジが実質的にベース音を変えるだけの変化となり、滑らかなコードチェンジとなるのも特徴です。

使用例②:Ⅰ→#Ⅰdim→Ⅱm

【YouTube】Be there/大橋トリオ feat. BONNIE PINK

使用箇所は冒頭のイントロです。

Key: Dメジャーキー
出現箇所: 冒頭から

コード進行(簡易版):
|D|D#dim|Em|A|D|D#dim|Em|A|…

度数表記だと、

Ⅰ|#Ⅰdim|Ⅱm|Ⅴ|Ⅰ|#Ⅰdim|Ⅱm|Ⅴ|…

となり、赤文字部分がパッシングディミニッシュを含む進行になります。

使用例③:Ⅳ→#Ⅳdim→Ⅴ

【YouTube】透明人間/東京事変

出現箇所はBメロ、以下のような進行です。

Key:Dメジャーキー
出現箇所:0:45〜(歌詞:秘密も愉しいけれど〜)

コード進行(簡易版):
|G|G#dim|A|A#dim|Bm|A|G…

度数表記だと、

Ⅳ|#Ⅳdim|Ⅴ|#Ⅴdim|Ⅵm|Ⅴ|Ⅳ…

となり、赤文字部分がパッシングディミニッシュを含む進行になります。ちなみにその直後に使用例①のパターンが使用されていますね。

■ディミニッシュが経過音として用いられる理由

前述した通りにパッシングディミニッシュの代表的なパターンは、ディミニッシュコードが半音上のメジャーコードやマイナーコードに進行する形です。これらのポイントは「ドミナントモーションに良く似た形であること」です。

一例として、Ⅴ→#Ⅴdim→Ⅵmを取り上げてみると、
#Ⅴdim→Ⅵmの部分が、Ⅲ7→Ⅵmというドミナントモーションを含む進行に類似しているということです。

【参考記事】ドミナントモーションとは?〜セブンスコードの基本進行〜
【参考記事】セカンダリードミナントコードとは?【特徴と使い方】

#ⅤdimとⅢ7は構成音が似ています。

Cメジャーキーを例にしてみます。
#ⅤdimであるG#dimとⅢ7であるE7の構成音は以下のようになっています。

G#dim …  ソ#、シ、レ、ファ
E7 …  ミ、ソ#、シ、レ

Ⅲ7→Ⅵmはドミナントモーション(セカンダリードミナント)と呼ばれる形で、Ⅲ7はⅥmへの進行を強く促します。詳細は割愛しますが、#Ⅴdimもまた、このドミナントモーションにおけるドミナントコードⅢ7と似たように機能しています。

また、上記のことはこの記事で3パターン示した、ディミニッシュコードが半音上に進行するパターンにおいてはすべて同様のことが言え、これがディミニッシュコードが経過音として用いられる要因と言えます。

参考として、
Cメジャーキーにおいて、前述した使用例①〜③とそれらに似た形のドミナントモーションの進行は以下のようになります。

使用例①:
G→G#dim→Am
G→E7→Am

使用例②:
C→C#dim→Dm
G→A7→Dm

使用例③:
F→F#dim→G
F→D7→G

上記のようにパッシングディミニッシュを用いたパターンとドミナントセブンスコード(○7)を用いたドミナントモーションの形は、互いに代替可能なケースが多いため、作曲の際にはいろいろと試してみると良いと思います。